クリス・アンダーソン「フリー」iPhone版2011/01/28 00:00

1ヶ月ほど前、iPhoneアプリとしてクリス・アンダーソン著「フリー」が提供されていた。当然?では無いが、無料(フリー)でダウンロードできた。(フリーだったのは限定期間のみで、今はiTunes App Store で¥1000らしいが)。
http://itunes.apple.com/jp/app/id408367927
free

書籍自体はもっと前からあり、ダイヤモンドでもずいぶん前に取り上げられていたが、当時はあまり興味を持たなかった。無料という事でダウンロードして読み進めてみると、なかなか興味深い内容だった。この中での気になったキーワードのいくつかをメモしたい。

■本の紹介サイト
http://www.freemium.jp/


「内部相互補助」
一方の費用を他の収益でカバーすること。コンテンツの提供者と消費者、費用の負担者には様々なケースがあり、これによる見せかけの無料も昔からある。ラジオやテレビ、販促用のオマケ、アマゾンで\1500以上買えば送料無料など。
ただし、消費者1人当たりにかかるコストを限界費用に近づけて、無視出来るほどの金額にする事で、利用者は実際に無料で消費できる様になるケースが登場した。Webの世界で取り扱える物はこれが実現しやすく、WEBを取り巻く技術的な要素がそれを可能にしている。

「心理的取引コスト」
考える事に費やされる労力。たとえ1円でも金を支払うという事は、そこにそれだけの価値があるか判断が必要になる。その労力は購入するのをためらわせるのに十分な力を持つ。

「模倣要求」
他人がしている事と同じ事をしたがる欲求。他人の決断が、自分自身の決断を正当化するから。

・・・ところが、商品が無料になると、そうした判断が必要無くなる。
1000円の物が900円になる事と、100円の物が0円になる事は、値引き額は同じだが効果は全く異なる。「予想通りに不合理」の中で、消費者は無料になると、正しい評価ができなくなる事が説明されている。

「魅力的利益保存の法則」
あらゆる製品はコモディティ化して安くなって行く。価値はより希少な物へ移って行く。企業は新しい希少性を探す。希少性を生み出すのは、それが潤沢であるかどうかによる。情報ならば、一般化された情報は無料に向かう。カスタマイズされた情報は高価になる。今日で最も希少なのは、様々な知恵と知識を用いて希少な情報を生み出す種類の人だ。

「ベルトラン競争」
競争市場において、価格は限界費用まで下落する、とする説。現在は、世界中を相手にした真の競争市場だと言える。…そして、情報のコモディティ化は進み、模倣はあっという間に進んで商品の希少性が失われるのも早くなる。市場を独占して、競争市場ではない状況にできれば、価格の維持は可能だ。

「非対象的競争者」
ある業界で、パイを分け合うという形の参入ではなく、別のパイを用意して、既存のパイ消費自体を縮小させてしまう競争者。例として、百科事典業界におけるMicrosoft エンカルタ、そしてwikipediaの存在

「誘発された陳腐化」
現行モデルが市場に行き渡り、類似品やコピー商品まで出る様になると、その商品の希少性は失われ、価値が低下する。ここで最新モデルが出れば、その希少性は相対的に高くなる。
商品は時間と共にコモディティ化するが、それは新しいモデルの希少性を高めるのに役立つ。
→ファッション業界で言えば、毎年新モデルが出て、12年位でまた昔のトレンドに戻るのは、永続的に希少性を保つように計算された事なのだろうか?



NHK「クローズアップ現代 - 異能の挑戦」 を見て2011/01/25 00:20

既存の会社になじまない特異な才能の持ち主の能力を生かすには?
というNHKの特集の中で気になったいくつかの事のメモ。

■Infinity Ventures Summit(IVS)
http://www.infinityventures.com/ivs/
ベンチャーキャピタル企業Infinity Venture Partners 主催のイベント。年2回開催
 
■IVS2010Fall で優勝したモデル
BI的な分析で思いもよらない関連性を見つけ出す。ユーザ思考を見つけ出す材料はネットから。ツイッターとか。それで株価を予測する。それもいいかげんではなく高い的中率で。
→ビールとオムツがセットで売れる…みたいに、関連性を導き出すアイデアは以前からあった、実際の企業の販売計画の現場では、前年対比とか季節変動とかを考慮して製品出荷量を計算するだけでも、会社によっては満足にできないケースが多いので、突拍子も無いキーワード同士の関連性を雑多なWEBを材料にできたとしたらすごい技術かも…という感想、

■SASSOR
このイベントでは、もうひとつな感じで優勝はできなかったそうだけど個人的に面白いなぁと思うアイデア。消費電力を計測するチェッカーをコンセントと機器の間にかます。計測した内容は無線でHOST機を通じてネットへ報告される。電源も外出先からON/OFFできる…みたいなモデル。
http://www.sassor.jp/elp/
→テレビではXBEEモジュールと電気計測する機構が見えたので、ほうほうそうなのね~という感じ。

ただ、ここで実現されている機構自体は、既存の機能、サービスを組み合わせればできるもので、新規性という点では低いのだろうか? 個人で電子工作するには面白いテーマだと思うけど。
最近の機能は、より広い市場で売れる事を望むため、モジュール化され利用しやすい形態になる。だから携帯用の小型のカメラモジュールだって、PSPのパネルだって買って利用できる(あとは利用するためのスキルがあれば)。私のような素人でもArduinoでちょっとした電子工作が楽しめるのはその恩恵によるところが大きい。
個々の機能は非常に高機能でありながら、アイデアを実現する時の材料として容易に使える。これってJavaのクラスみたいなものか。でも、アイデアがモジュールを組み合わせて実現したものであれば、アイデアが公表された時点でサムスンのような会社に真似される可能性も高くなる。それでビジネスとして儲かるかどうかは市場が判断する事だが、あとは市場からの評価がついて、大企業にマネされるまでの間にどれだけの既得利権が得られるかという点が、ベンチャービジネスとしての勝負どころという事になるのかね。

ネットワークストレージ2010/11/21 00:00

5年ほど前に、「ストレージは最終的にネット上で必要分だけ借りればよい」という極端な思いつきの元で、ネット上にファイルを格納するサービスを契約して使用した事があった。しかしブラウザ経由での操作とか、いちいちファイルをupload/downloadする操作が面倒でやめた経緯がある。
当時は月300円程度で100MBくらいだったと思う。まだクラウドという言葉が世の中に出回ってなかった頃だったが、最近のはもう少し使いやすくなってるだろうか。コンシューマ向けのオンラインストレージやクラウドストレージサービスを少し調べてみると、MicrosoftやgoogleでGByteクラスのストレージが無料で利用できる事を確認した。

Windows Live
25Gバイトのストレージ容量があるSkyDriveが使用できる。
https://login.live.com/login.srf

単純にLAN上へファイル保存するならNASが選択肢になり、自宅ではLANDISKを使用中で、特に支障が無い。でもイマドキな魅力感をもった2つのサービスをメモする。

■Pogoplug
Pogoplugに全俺が感動ッ!! - ケータイ Watch
http://k-tai.impress.co.jp/docs/column/stapa/20101101_403789.html

■N-TRANSFER
クラウド対応のデバイスサーバ
スタパビジョン-#059 NTT西日本「N-TRANSFER」
N-TRANSFER
http://www.ntra.jp/


そうして調べる中で感じた奇妙な気持ちとして、「ネットワーク上のどこに私のデータは格納されたのか?」という事。Pogoplugなどは、自分のLANにつないだディスクへアクセスする時でも、web経由でクラウドサービスとして利用するのであり、デバイスに直接接続するわけではないように見える。利用者にとって目の前のHDDに保存されていようが、実際にはどこか別の場所に保存されていようが、区別は無い状態になる。

クラウド化するストレージ技術
http://techtarget.itmedia.co.jp/tt/news/1010/22/news03.html

このようなサービスが常態化すれば、1つのパラダイムシフトが起きそうな気がする。

ストレージを購入してネットにつなぐという行為が、自分のためのストレージをつなぐのではなく、クラウドで利用可能なリソースを提供するもの、という位置づけに意識が変わった時、ちょうど流行りの太陽光発電のような状況が起きるのではないか。

例えば、10TBのストレージを購入した人がいたとする。買ってきた人は、いずれ10TBのディスクをすべて消費するかもしれないが、それまでは大半が「空き」の状態が続く。空いた余剰のディスクスペースは、太陽光発電で生産された電気と同様、パブリッククラウド上のリソースとして「販売」する。こうなれば、利用者は空きの分だけクラウドサービスからサービス料を徴収する事ができる。

そして一般消費者が、「わざわざ自前のディスクを用意しなくてもクラウド上でサービス料を払って必要なだけストレージ容量を買えばいい」派の人と、「クラウドリソースを提供して、購入資金を上回るサービス料を得た方がトータルコストが削減できる」と考える派の人に分かれるのではないか。
やがてストレージリソースを提供するのは、個人と専門企業が入り混じった状態になる。クラウドリソース提供者には社会的な責任が生まれてくる。犯罪も起きる。関連する法律が整備される。

さらにSF的な物語にするなら、こんな展開にできるかも。
202x年の段階で、日本のクラウドリソースの提供総数とその性能が世界1となる。
→202x年の事業仕分けで、政府はスーパーコンピュータ開発を停止、クラウドリソースを使用したグリッドコンピューティングを主軸とし、その能力を一般企業や海外に販売するように方針転換する。
→政府はクラウドリソースの囲い込みと、国力としてクラウドリソースの増強に転じる。
→203x年、国民への義務として、クラウドリソースの提供法案を可決する。
→クラウド上に蓄えられた個人の情報が政府の監視下に入る
→204x年、クラウド上に「知性」の存在が確認される。
→政府ではなく、実際にはそのクラウド上の「知性」によって徐々に人々がコントロールされる。
物語の主人公が、その実態に少しづつ気付く・・・といった所。
知性の名前は、暴力的なら「スカイネット」でもいいし、友好的なら「エイワ」でも良いね。




ファンクショナルアプローチ2010/11/19 00:29

「ファンクショナル・アプローチ入門」を読む。

横田尚哉さんの出した本で、ものの形にとらわれず、その形がもつ意味を抽出して、「ファンクション」として整理し、これを元に、そのものが本質的に達成しようとした目的は何かを抽出する手法…といったところ。そして整理されたファンクションから新しい形を模索するというやり方。
http://www.kamuna.jp/ve/ve_fa.php

ちょっとした議論の場などで、企画立案などの検討時に利用できそうなツールだと感じた。
手に入れたツールは利用できないと意味が無いので、先日考えた「電子書籍」を題材に考えてみた。まず「本」が持つ形に着目して、緑のハコに記入。その性質が示す目的を左側に青のハコで記入。記入した青のハコからさらにその目的を考えて左側に記入。どんどん進めていくと、樹形図上の図が出来上がる。
本のFASTダイアグラム

この1つ1つが「ファンクション」で、整理された図が「FASTダイアグラム」と呼ぶ。今回作成してみたのが必ずしも正しいわけではないが、それっぽい図がなんとかできた。
左側に行くほど、その物の本質部分と言う事になる。今回抽出してみると、「本」という形が実現しようとしている目的は「円滑な情報取得環境を作る」という事になった。これはあくまで今自分がやったケースであって、別の人がやったら違った結果になるかもしれない。

そして今度は左から逆に右へたどっていって、「ファンクションを満たす本以外のカタチ」について考えてみる。最近の電子書籍が満たしている条件をいくつか赤いハコとして記入してみると、いくつかの部分を除いて、既存の本のファンクションをほぼ満たしていて、凌駕している部分もあるなーと感じた。リファレンス系の本などがどんどん電子書籍化したらアリな気がする。
唯一、電子書籍で絶対に達成できないのは、電子書籍であるために、百科事典の持つような「立派な感じ」をかもしだす事は決してできないという事。本が本棚にギッシリつまってたらなかなか壮観だと思うが、電子書籍では10000冊の本であってもiPodの中に入ってしまう。
そんなところか。

情報処理試験のメモ2010/10/18 00:28

情報処理試験は終了した。。。
あまり勉強もしなかったので合格できる気はしていないが、わずかばかり勉強する中でも仕事に応用できそうな事項があったのでメモする。


■業務フローの表記方法
業務フローはシステム構築の要件定義段階で良く書くが、表記方法を標準化したい場合に何に従うべきか?

→情報処理の予想問題の中で出てきたキーワード「BPMN」
@ITの特集記事リンク
http://www.atmarkit.co.jp/farc/rensai/bpmn01/bpmn01.html

UMLのアクティビティ図でも同種の事ができるが、BPMNの方が表現しやすいという評価が上記でされている。
他には、内部統制関連の資料でもフローが描かれるが、あれも統一できないものだろうか・・・ 
基幹システムの世界ではSOAの流れになっているが、この記述も「ビジネスプロセスに紐付くサービス」という形で表現頂けるとありがたい気がする。


■システム要件定義
機能要件 / 非機能要件 を意識した要件定義が必要。特にアプリ側の担当者としては非機能要件を疎かにしがちな気がする。


■システム関連図
システム間でどのようなデータのやり取りをするのか図に表わす事は良くあるし、それぞれその時の目的に合わせて必要な部分にフォーカスを当てた図となる。いきなりファイル単位での連携図になってしまう事もある。
→DFDをレベル0(全社レベル)から順に詳細化して作成すれば、わかりやすい気がしたが、「図をドリルダウンする」という文化というか表現手法が追いついていない気がする。PPTで描こうとすると自分でページ切りしてやらないといけない。FLASHならカッコよく作れる気もするが、そんな事に時間を費やせる余裕も無い。そうなるとせいぜい2段階位で図を作る感じになる。


■モジュール分割の良否判定
システム保守をしていると、不具合対応だとか仕様変更だとかいった場面で、手を入れようとする機能の変更がどこまで影響を与えるかを調べる必要が出て、それが意外な所に影響を与える事がわかってしまったりする事がある。こう考えると、その機能の変更はタイヘン!という事になるが、そもそも元の機能の設計がダメだという事が言えないか。いや、言えるはず。
モジュールの結合度を、設計レビュー時にきちんと評価すれば、それがダメな設計か良い設計か(レビュー者が経験が浅かったとしても)判断できるのではないか。あまりそうした指標での評価ができていない気がする。機能を満たす事に主眼が置かれていて、あとはバグが無ければ良しとされてしまう。運用性というのは見えづらい部分なので仕方ないかもしれないが…

週刊ダイヤモンド 電子書籍特集2010/10/14 01:10

最近の個人的ブームはiPod touchで電子書籍を読む事。
iPod touch のアプリで豊平文庫とよばれる青空文庫ビューアがあり、フリーで30作品まで読む事ができるので、5作品ほど読んでみた。

青空文庫は版権の切れた小説で、夏目漱石や太宰治、芥川龍之介などの文学作品やコナン・ドイルの作品などがある。過去にもPC上でダウンロードして読む事ができる機能は存在したし、ダウンロードもいくつかしてみたが、結局読む事はなかった。青空文庫の対象は、作品は古いとはいえ、決して悪くない。でもPC画面を見ながら読もうという気にはなれなかった。

今回はiPodで読めるので、通勤中とか寝る前にベッドで寝ころがりながらとか、小説を手にするのと同じ感覚なので、読む上で何の不都合もなかった。何冊ダウンロードしても、重さも量も変わらないし、いつでも胸ポケットに入れられる。これなら電子書籍でも不都合が無いなぁと思っている所で、ダイヤモンドの特集が出ていた。


ざっと内容をまとめると…
■ダイヤモンド - 電子書籍特集
・書籍販売数の低迷の現状
・書籍販売:少数多ロット生産、高い返品率、それを補うための新刊の発行
 →多数の刊行物と、限られる書店の売り場面積
 →小規模の書店には本が回らない、出版側の発行も売れ筋の本に絞られる
 →既存の小規模書店が淘汰される現状
・在庫・返品リスクがない電子書籍は以前から存在したが
 既存の電子書籍販売対象はごく限られた分野のみだった
・本の置換えを支える技術・端末・サービスの登場
 →それぞれの端末紹介、ビューア紹介
 →さらに書籍を超える機能の紹介
・それでも売上の良い特色ある本屋(=顧客志向による)
・本を作って流通させるのでなく、必要な本をその場で作る試み
・電子書籍だからできる、ソーシャルリーディングという新しい体験
・著者が直接出版する流れ。通常の印税と電子書籍の印税。
・蔵書を電子化する図書館の試み
・自前で電子書籍を作る方法


などなど。出版業界全体の持つ閉塞感、電子書籍の波、そして出版社、著者、流通業者、書店、それぞれの思惑や試みなどが知る事ができ、大変興味深い内容だった。


さしあたって、自分は1消費者として電子書籍との関係はどうしていくべきだろうか。商品の価値は顧客が決める…なので、いくつかの視点で自分にとって本との関わりは何が望みか考えてみた。

【出会う】:アマゾンのお勧めでも良いが、本屋で目にして欲しいと感じる体験にはかなわない気がする。
【買う】:電子書籍の方が安いしすぐに手に入る。なので、あれば電子書籍。無ければamazonで探す。
【読む】:小説や新書などは電子書籍で何の不都合もない。雑誌やコミックなどは、iPodでは少々小さすぎてやりにくそうな気もする。
【持ち歩く】何冊持っても、電子書籍に変化はない。本だとこうはいかない。
【保存する】本が10年でダメになる事はなかなか無い。iPodはいつか壊れるか、バッテリがへたる。また、iPodで保存した書籍形態が10年後の端末でも使えるような保証は全くないのが不安。
【貸す】電子書籍は買って読み終わった本を他人に貸したりできない。
【著す】本を書く気が無いのであまり実感が無いが、電子書籍の方が敷居が低いのは確実だろう。ただ、校正とかプロの編集が入らないとまともな読み物にはならないと思う。

7つの視点の内、3つは電子書籍に肯定的だが、残りは否定か、どちらでも良い気持ちになった。決定打が無いので、当面はいいとこどりしていきたい。